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2006.11.02

5、6世紀頃のイングランド

見た直後の感想でも書いたけど、この映画で「イングランド」と「アイルランド」の関係が気になった。
映画を見て、あれが史実だと思う人がいると困る(※1)ので、5〜6世紀のブリテン諸島の様子を映画と絡めて書いてみる。

※1 たぶん生きていく上での必須知識ではないから(笑)だれも困らないような気もするが、中世好きとしてのわたしが困る(^^;)

映画は「ローマ人が撤退した後」の時代が舞台。
ローマ軍が撤退したのは西暦410年。この頃にはローマ帝国自体の屋台骨がぼろぼろで、とても属州支配の余裕なんかなかったころ。ローマから見ると最果てってくらい辺境の属州だったブリタニアは、大陸のガリア方面、北のスコットランド、ノルウェー方面、西のアイルランド方面から、常に蛮族の侵入にさらされていた。ローマのにらみが利いていた頃はこれらもおとなしくしていたのだが、ローマ本国にごたごたが続くと好機到来と活動始めた。
つまりブリタニアの人たちは「自分の身は自分で守ってね」とローマからほっぽり出されたわけだ。
ブリタニアは辺境とはいえ、500年のローマ支配の間にケルト系とローマ系は混ざり合い、住民もローマ化し、キリスト教もある程度普及していた。 

はっきりとは書いてないが映画の時代はローマが去った後、七王国成立以前か成立直後ぐらいに思われる。だいたい6世紀中頃か。

七王国とはノーサンブリア、マーシア、イースト・アングリア、エセックス、ウェセックス、ケント、サセックスの七つ。当時大陸側から侵入してきたアングロ・サクソン系が築いた王国群です。


ソース:Anglo-Saxon Britain

地図でわかるようにコーンウォール(ドムノニア)はこの七王国に入っていない。
実はコーンウォールやウェールズなど、地図で緑色の部分はサクソン、アングル、ジュート族の侵入で辺境に追いやられた(要するに戦争に負けて土地を追われて落ち延びた)ブリトン人またはブルトン人が定住した土地なのだ(※2)。
つまりコーンウォールの人から見れば、ウェセックスやサセックス、ノーサンブリアのヨークの諸候なんかは、アイルランドと同じく敵の侵略者だったのだ。

※2 フランスのブルターニュ(ブリトン人の国の意味)も落ち延びたブリトン人の定住地。実際コーンウォールはアイルランドよりブルターニュの方が断然近い。

マーク王が諸候を集めてイングランド防衛を説くが、イングランドは元々アングル族の国の意味だから、本来イングランドというアイデンティティ成立以前のコーンウォールの領主が使う言葉ではないはず。七王国側の土地の領主にとっては、地理を見てもアイルランドからの侵略はほとんど関係ない。地図で緑の部分が緩衝剤になってるからだ。

コーンウォールの王がアングロ・サクソン系の領主達に助けを求めることはあったかもしれないが、当然彼らとて無償では動かない。報酬は土地か黄金か。ヘタしたら今いる土地まで全部とられちゃうかもしれない危険な戦略だ。
そもそもサクソン侵入のきっかけが、内部の対立に外国の勢力を呼び込んだことなのだから。

マーク王は「王」を名乗っているが、小国が乱立していた時代だから実際には他の諸候と比べて特に権力があるわけではない。

長くなったのでアイルランドの話は次のエントリーでやります。

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コメント

どうもです。TB、コメントありがとうございました。
今話題の世界史の教師です・・・。
なかなか鋭い切り込み、勉強になりました。
あのアイルランドの描き方にあまりに違和感を感じてしまい、恋物語にものめりこめませんでした。
確信犯的にあの設定にしたのかもしれませんが、それにしては時代考証、無視しすぎですよね。
やっぱ、世界史は勉強しないと!!
どうぞよろしく。

投稿: sakurai | 2006.11.02 20:12

>sakurai さん
コメントありがとうございます。
世界史の先生でしたか!

あのアイルランドの描き方はひどいですよね…。イギリス好き+アイルランド好きにとっては、微力ながらも、これはなんとか声を上げなければと思ってしまいました。

歴史を勉強すると今の問題もすこしわかりやすくなるし、中高生にも歴史を学ぶ楽しさを知ってほしいですね〜〜。ディープなネタほど歴史はおもしろいです(^^)

ではでは、また遊びにきてください〜

投稿: みん | 2006.11.03 01:30

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