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2006.11.01

「トリスタンとイゾルデ」見た直後の感想

ミクシィにあげた、見たその日の感想を転載します。
けっこう辛口(^^;)
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まず一つ!
媚薬使わないならせめて婚前交渉はやめろ…orz

初夜問題(※1)どうやってクリアしたんですか、イゾルデ!?
ブラグウェンにあたるのは、映画では乳母ブラーニャだがおばさんだし、多分未亡人なので当然この役は果たせません。

※1コーンウォールに向かう船の中で媚薬を飲んで、一線を超えてしまった二人。初夜の床でイゾルデがバージンでないのがばれると大変なので、間違えて媚薬を飲ませた侍女のブラグウェンが責任をとって、暗闇の中身代わりになってマルク王をごまかした。(ひっでー(^^;))

映画では何にも言わずにマーク王はイゾルデと夫婦生活してますが、気が付かなかったのか? 気が付いていながら何も言わなかったのなら、トリー(※2)との仲にも察しがつくと思うのだが。
つねづね疑問なんだけど、女性から自己申告なかった場合、男性は処女かどうか、本当にわかるものなの? 出血の有無も人によるしさ。だれか教えてください。

※2トリスタン、トリストラムのわたしの省略形(笑)

「トリスタンとイゾルデ」はめくるめく愛の世界なわけだが、この映画、トリスタンを助けるイゾルデに始まって、二人のヌードやら濡れ場やら密会がやたら多い。きれいに描いてるしややエロスくらいなんだかど、「媚薬」という魔法アイテム、超自然的な要素を外したおかげで、こいつら頭ん中セックスだけかよ! って風に見えちゃう。

でも恋愛ってセックスだけじゃないじゃん。深い恋、深い愛、になればなるほど、相手(その立場を含めて)を想い、目を交わしただけで幸せとか、あるでしょ。(こう思うのはわたしがロマンチストだからかもしれないけど)わたしはそれが美しいと思う。
「媚薬」というアイテムはこういった思慮を取っ払って、ある種、愛の獣性をも解放する代物だと考える。だから二人は自分達の行動が制御できないし、正気のときの忠誠と自分ではどうにもできない愛の狂気の間で苦しむ。

映画では忠誠と愛の狭間で悩むというのがあまり感じられない。二人が悩むのは、一緒にいられない、ただそれだけ。そのくらい冷静になれば決着つくだろ! って程度。
こう感じるのはわたしが熱烈な恋愛をしたことないからでしょうか? (笑)
現代物ならまあこうゆう描き方も許すんだけど(見には行かないけど)時代物で、しかも二人は人の上に立つ王族や族長クラス。ならばやっぱりノブレス・オブリージというポイントがもっともっと欲しい。でないとわたしはやっぱり共感できないなぁ。

二人はマーク王のことは多少考えてるが、この映画を通して背後の民衆、戦場で実際に苦労する一般人はほとんどでてこない。マーク王はそうゆうことを考える立派な君主として描かれているので、実は一番カッコいい。

アイルランドとブリテンの扱いも、ちょっと、というかかなり気になった。
ローマが去ってしばらく後の他民族に侵略されてる時代といえば、歴史上のアーサー時代なのだが、アイルランドが徹底的に侵略者の悪者として描かれているのがいかにも短絡。「キング・アーサー」でサクソンが野蛮人の悪者だったのを思い出す。
そもそもこの時代アイルランド全土を支配する王はいない。ドナカー(この名前はどっからきたんだ?)はアイルランドの王の一人のはず。ブリテンが地方豪族に分割されてるのと同じ。アイルランドに対抗する同盟としてブリテン中から部族がやってくるってのもかなーり無理がある。部族の仲にピクト、サクソン、ジュートも入っているようだが、サクソンやジュートは一部が定住後も波状的に何度も東から侵入しているのだから、ヨークの部族まで本拠地を開けてまで見返りもなくコーンウォールまで来るとはとても思えない。ずっと「イングランド」って言ってるのも変だ。イングランドはアングル人(アングロ・サクソンのアングル)の国の意味だから、この時代はまだイングランドは成立していない。せめてブリテンといってくれ。実際地図にはブリテンって書いてあるのに…。(はっきり覚えてないがトリーのパパのときはイングランドという言葉は使ってなかったかも)

イズーの母の死にキャプションがHigh Queenってでてたのが、アイルランドの部族社会を少し暗示してたけど、伝説ではイズーの母親が実験握ってる雰囲気なんだけど、さっさと死んでしまうので、ケルトの女権イメージはみごとにすっ飛ばされてたなぁ。なんであんなに家父長制なんだ。

メロートというおいしいキャラを出しておきながら生かしきれないのも残念。サイモンは最初からいらないから、トリスタンとメロート、二人の友情と仲違いをもっと描けば腐女子萌え度アップなのに~~。
メロートの元ネタはサー・アングレット。トリーのいとこでイズーとの関係をマルク王に暴露する人。ランスに対するモードレッドの役割と同じ。名前からしてモードレッド役割定着後に同位置のキャラとしてトリスタン伝説に混ざったのだろう。

トリスタンの名前もぶっ飛んだ。なんで両親生きてるの!?(※3)理由もなく息子につけるにはひどすぎる名前でないですか(笑)

※3トリスタンの意味は「悲しみの子」というのが一般的。一般的な伝説では父はリオネス(コーンウォールより先の伝説の島)のメリオダス王、母はマルク王の妹。父が死んで母も息子を生んで瀕死。母は生まれたばかりの息子に「父もおらず自分が成長を見ることもできない『悲しみの子』」と名付けて死亡する。

ただし映画ではウィトレットが「ピクト人には従ええん!」というとこみると、トリスタン=ピクト人説を取ってるのかも。その場合は名前はドルストとかドルスタンになるのだが、語感が悪いからねー(笑)
パパの名前のアラゴンは元ネタなんだろ?

裏切り者ウィトレット、最初ウェセックスの領主(ウィトレット・オブ・ウェセックス)って言ってたように思うのだが、後半ではロード・オブ・グラストンベリーって言ってた。グラストンベリーはウェセックスじゃなくてサマセットだよなぁ。

他細かいツッコミ。
あの時代にイゾルデが持ってるようなサイズの小さい本はまずない。しかもあの本のページが妙にモノトーン。豪華絢爛なアイルランドの写本はどしたの~~。最後のスタッフロールまで見ると、イゾルデが朗読する詩はジョン・ダン(16世紀の人)のものだとわかる(笑)

あの時代にフォークはまだない。

ラスト二本の柳が絡まって云々とでるが、「イゾルデがトリスタンを埋葬した場所」に生えてるらしい。墓に一人しかいないじゃん(^^;)
伝説によってバラとかいばらとか言う場合もあるが、「死んだ恋人二人の別々の墓から二本の植物が絡み合ってはなれない」から感動なんであって、一人の墓から植物が2本出てるのは別に普通だよな。

ほめるとこ。
イゾルデの衣装はロマン派、ラファエル前派風で美しい。特に婚礼への船に乗ってるシーンが絶品。
ジョン・コリアの「五月祭のグウィネヴィア」
ハーバード・ドレイパーの「ランスロットとグウィネヴィア」 あたりがイメージ元か。

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コメント

TBありがとうございました。
ぱちぱちぱち!!めちゃめちゃ笑わせていただきました。

映画鑑賞後 日を追うごとに不満がたまってきているのですが、いいたいこと全部書いてくださっていて 溜飲下がりました!すべてに同感です!!!!!
私は児童文学程度プラス岩波文庫とワーグナー少々の知識しかありませんが それでも納得できかねる映画でした。
どうしてここまで話を変えたのかリドリー・スコットに訊きたいくらいです。
パンフは購入する気にならなかったので未読ですが。

>映画では忠誠と愛の狭間で悩むというのがあまり感じられない。
 二人が悩むのは、一緒にいられない、ただそれだけ。
そうなんですよね。媚薬も飲んでいないのに。 
まさに「こいつら頭ん中セックスだけかよ!」ですよね。
マーク王がいい人だけに 不義を働いている自責の念があまり感じられないので(特にイゾルデに)
仮にこの二人がトリスタンとイゾルデでないにしても
二人に共感しにくくてラストまで涙が1滴も出ませんでした。
 
5、6世紀頃のイングランドってどうだったんだろうとあちこち調べかけていたところでしたので 続く記事も大変わかりやすくて嬉しいです。
楽しくつっこんで下さい。
アーサー王サイトさまも素晴らしいです!これからも楽しみにしています!

私もトラバさせていただきます。よろしくお願いします。

投稿: herbaltea | 2006.11.02 15:57

herbaltea さん
コメントありがとうございます! 楽しんでいただけてうれしいです♪

パンフ、井辻朱美さんが書いてたので買いました。
映画についてはイゾルデの金髪の由来と、媚薬なしがサトクリフの「トリスタンとイズー」の延長にある設定ってくらいで、後は伝説の歴史背景の解説でした。映画事態の評は特に書かずにうまくまとめてあって、さすがプロだなぁと思いました。

他は斜め読みだったのですが、リドリー・スコットのインタビューがちょっと出ていて、それによると「ドラマ的にも感情的にもパワフルで、たとえば背景や時代を変更したとしても話を展開させることができるんだ」といってます……。
この映画が「背景や時代を変更した」ものなのかどうかは不明ですorz
どうせ変更するなら、現代物とかでやったほうがよかったように思いますが。

>二人に共感しにくくてラストまで涙が1滴も出ませんでした。
同じです。でも感動で泣いた人いるんだろうなぁ(^^;)

当時のアイルランドについても少し書きましたのでどうぞ〜〜。

ではではまた遊びにきてください(^^)/

投稿: みん | 2006.11.03 01:22

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